―加齢に伴い、口腔内細菌叢※2の菌のバランスが乱れやすくなることを示唆―
株式会社サイキンソー(本社:東京都渋谷区、代表取締役:原 洋介、以下、サイキンソー)は、ライオン株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役兼社長執行役員:竹森 征之、以下、ライオン)※3と、年齢と口腔内細菌叢の関連について、共同研究を進めています。この度、「口腔内細菌叢の菌のバランス(以下、口内の菌のバランス)※4」には年齢による違いが認められ、年齢が高いほど歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalis)が多く存在する傾向を確認しました。これは、加齢に伴って「口内の菌のバランス」が乱れやすくなることを示唆しています。本研究成果は、2026年9月5日(土)~6日(日)に開催された「第68回歯科基礎医学会学術大会(愛知県、愛知学院大学名城公園キャンパス)」で発表しました。
発表要旨
1 「口内の菌のバランス」は、年齢による違いが認められた。
2 多数の細菌種の中で、歯周病原細菌が年齢との関連が最も強く、年齢が高いほど口内に占める歯周病原細菌の割合が高い傾向が確認された。
これらの結果から、加齢に伴い「口内の菌のバランス」が、歯周病原細菌が多い乱れた状態になりやすくなることが示唆され、年齢に応じたケアや対策が重要であると考えられる。
※1 歯周病に関わる細菌の代表菌種であるPorphyromonas gingivalis。この菌は歯肉に炎症を引き起こすだけでなく、口腔内細菌叢の乱れを引き起こすキーストーン細菌としても報告されている(G. Hajishengallis et al., Low-abundance biofilm species orchestrates inflammatory periodontal disease through the commensal microbiota and complement. Cell Host Microbe, 10(5)(2011):497-506)
※2 口腔環境に生息する細菌の集団のこと
※3 2024年6月6日身体の細菌叢を解き明かすことによるヘルスケアへの貢献を目指し、 ライオン株式会社から出資を受けた
※4 口腔内細菌叢を構成する細菌の種類別の割合のこと
■研究背景
う蝕や歯周病といった口腔疾患の予防には、従来のプラークコントロールに加え、「口内の菌のバランス」を整えることが重要であると考えられています※5。ライオンはこれまで、このバランスを整えるためには、その乱れを引き起こす一因と考えられる歯周病原細菌を選択的に抑えることが重要と考え、研究を進めてきました※6。
歯周病の指標の一つである歯周ポケットを有する人の割合は、年齢とともに高くなることが報告されています※7。その要因として、年齢を重ねることによる「口内の菌のバランス」の変化が考えられます。そこで今回、サイキンソーが保有する20~97歳の幅広い年齢層のデータ※8を活用し、年齢と「口内の菌のバランス」の関連を解析しました。
※5 Kilian M et al., The oral microbiome – an update for oral healthcare professionals. Br Dent J. 2016;221(10):657-666.
※6 2025年9月26日:グリチルリチン酸ジカリウムが口腔内の歯周病原細菌を選択的に抑制する作用を確認 ~口腔内細菌叢(口腔内フローラ)のバランスを整える、歯周病予防の新たなアプローチ~
※7 厚生労働省 令和6年歯科疾患実態調査
※8 サイキンソーが提供する個人向け口腔内フローラ検査サービス「Mykinso Oral(マイキンソー オーラル)」を利用した669名のデータ
■主な研究結果
1. 年齢によって「口内の菌のバランス」が異なる
一人一人の口腔内細菌叢データをもとに主座標分析※9を実施し、「口内の菌のバランス」が似ている人ほど近くに配置されるよう図示しました(図1)。10歳ごとの年齢群で色分けし、年齢ごとの分布を比較しました。その結果、20歳代を表す黄緑から80・90歳代を表す紫へと、年齢が高い群ほど、分布が右に移動する傾向が確認され、年齢によって「口内の菌のバランス」が変化することを確認しました。
※9 「口内の菌のバランス」を構成する細菌の情報を二次元にプロットし、類似性を解析する手法。一つ一つの点は一人一人のデータを示し、点線の囲みは、各年齢群が分布する予想範囲(95%信頼区間:t分布)を示す

2. 年齢が高いほど、口内に占める歯周病原細菌の割合が高い
年齢との関連が強い細菌を調べるため、各細菌種に対して重回帰分析※10を行い、年齢と有意に正の関連を示す細菌種を抽出しました。その結果、多数の細菌種の中でも、歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisが最も関連が強いことが分かりました(図2)。
※10 細菌種ごとに、「その細菌の割合」と「年齢」との関連を統計的に解析。BMIや歯みがき時の出血の有無、おやつ・甘味飲料の摂取頻度などの影響を考慮

さらに、年齢との関連が最も強かった歯周病原細菌について、年代ごとの平均値を算出したところ、年齢が高い群ほど、歯周病原細菌が口内に占める割合が高いことが確認されました(図3)。

以上の結果から、「口内の菌のバランス」は年齢によって変化し、年齢が高いほど歯周病原細菌の割合が高いことが示されました。このことは、加齢に伴い、歯周病原細菌が増えて「口内の菌のバランス」が乱れやすくなる傾向を示しており、年齢に応じた「菌のバランスコントロール」の重要性が高まることを示唆しています。
■今後の展望
サイキンソーは、「細菌叢で人々を健康に」という理念のもと、主に腸内細菌叢の可視化と活用を通じた健康支援に取り組んでいます。近年は、「口内の菌のバランス」も全身の健康や日々のケアに関わる重要な領域として捉え、「マイキンソー オーラル」などを通じて知見の蓄積を進めています。今後も、さまざまな細菌叢データの収集・解析を進め、一人一人に応じた健康習慣づくりと健康増進に貢献してまいります。
ライオンは、口腔トラブルを繰り返さないためには、疾病などの原因となる細菌を一時的に除去するだけでなく、「菌のバランスコントロール」が重要であると考えています※11。今後も、「口内の菌のバランス」に着目した新たな視点から予防法の研究を進め、口腔からはじまる全身の健康増進に貢献してまいります。
※11次世代シークエンサーが解き明かす菌叢制御技術 https://www.lion.co.jp/ja/rd/basic/analysis/case01.php


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